(まえのおはなし)

お題 タカ・ユイバ様

【タ】

高台の高校、ボクの通う高校はそう呼ばれていた。
海を見下ろす小高い丘の上に立った校舎は年月とともにくすんではきたものの、
木々の間からちらりと見える白い壁はそれなりにおしゃれで海岸からもいい目印になった。
上り坂なので登校時間は汗だくになるけれど(そして遅刻寸前に焦るけれども)
帰路のんびりと自転車に乗りながら海風に吹かれるのはなかなかいいものだった。
もちろん、地元じゃなくて電車通学している人たちは駅前からバスに乗るのだけれど、
帰りはだらだらと続く長い下り坂をしゃべりながら下りていくほうが多かった。



【ユ】

夕日が沈んで次第に辺りが暗くなってきた。
「寄るだろ?」
と誘われて家ではなく駅の方へ自転車を向ける。
部活終わりにボクらが寄り道するお好み焼き屋は、
味よりも値段よりも圧倒的なボリュームとおばちゃんの人柄が人気の元だった。
今日も大盛りの豚玉を旺盛な食欲で平らげながらふと壁をみるとポスターが一枚増えていた。
「お、夏祭りもうすぐだな」



(つぎのおはなし)


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