(まえのおはなし) お題 ハル・モニカ様 【ハ】 花火のポスターだった。 それほど大きくはない、どちらかというと田舎町だけれど海岸沿いで打ち上げられる花火はそこそこ有名で、 わざわざ電車に乗ってやってくる浴衣姿の女の子たちで夏祭りの夜は華やいで見えた。 もちろん子供のころはそんな華やぎなんかどうでもよくて綿あめやら金魚すくいやら(出眼金を狙って当然取れなくって、お情けで1匹金魚もらって帰るわけだ)ヨーヨー釣りなんかに夢中だった。 【モ】 「もう何年も行ってないな夏祭り」 「なんだよジモティーは勿体ない事すんな」 俺なんか毎年めちゃ混みの電車乗って見に来てるのに、とふてくされる。 「お前毎年来てんの?なんつーか御苦労さま」 豚玉の最後のひときれをコーラで流し込む。 「へへえ」 なんだよその笑いは。 「今年は今年はな、行くんだよ一緒にな」 そうかこいつは先月から付き合ってるやついたんだっけ。 おぅ、そりゃよかったな、とかからかいながらもなんだか少し切ないような気がした。 (つぎのおはなし) TOPへ戻る |